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はちみつ産地判別検査解説 | 産地判別検査の同位体研究所

はちみつ産地判別検査解説

蜂蜜の産地判別検査

蜂蜜の産地の判別は、欧州においても英国やドイツ、フランスで取り組みが行われており、ヨーロッパ各地の蜂蜜を産地別で判別する研究が行われている他、欧州産と中国産蜂蜜の判別検査が民間検査機関により提供されています。 蜂蜜の炭素安定同位体比、酸素安定同位体比(欧州では水素安定同位体比が使用される場合が多い)は、蜜源となる花の安定同位体比を反映しています。 アカシアを例にとると、アカシアの生育地域の気候(湿潤な気候か、乾燥した気候か、生育地の緯度や高度)が安定同位体比に反映されます。この生育地域で異なる安定同位体比を利用して蜂蜜の産地の判別が可能となります。 またハチミツには蜜源による種類の違いがありますが、例えばそば、とち、菩提樹、クローバー、ミカン、レンゲなど蜜採取の地域、採取時期が異なる為、種類毎に判別に使用するデータが異なります。 アカシアの場合であれば、東日本を中心とした地域が産地であり、レンゲとなれば九州などが中心となります。 このような地域や開花時期の差は、ハチミツの安定同位体比値に反映されています。 またハチミツには、いろいろは花からの蜜を意味する「百花ハチミツ」がありますが、このようなハチミツの場合には、蜜源を特定したハチミツとは異なり分析はより困難となります。 このような場合、北海道産や、長野産など、生産地域の蜜源が地域として特徴ある値を示す地域の場合には、由来の確認も可能となりますが、由来不明(例えば国産)の場合には、産地判別精度は低下する為、検査には制約があります。 外国産蜂蜜については、蜂蜜の種類により生産国が異なります。 アカシアであれば主体は中国、東欧となります。 一方、クローバーのような蜜の場合は、カナダ、ニュージーランド、アルゼンチン、そしてミカン・オレンジであればメキシコ、南欧、米国など生産地域が異なります。 それぞれの国では、安定同位体比に特徴を有しており、この特徴をポイントとして判別が行われます。 また気候的に類似しているカナダと北海道の場合でも、安定同位体比の点からは、水素安定同位体比に違いがあり、判別が可能となります。 同位体研究所は、地域により異なる安定同位体比の特徴を踏まえて、判別に用いる安定同位体を選択しています。

国別の安定同位体比の分布

中国・欧州・日本で異なる安定同位体比分布

アカシア蜂蜜安定同位体比分布例
同位体研究所は、当初、国産蜂蜜50検体、輸入蜂蜜75検体の合計125検体にて解析を開始しました。 その後、国産アカシア蜂蜜生産地でのサンプル収集、蜂蜜生産者の協力を得て収集地域を拡大し、現在は、北海道、青森、秋田、岩手、山形、宮城、福島、栃木、新潟、群馬、埼玉、東京、千葉、茨城、長野、山梨、岐阜、富山、石川、福井、兵庫等のアカシア蜂蜜生産地を網羅し、国産アカシア蜂蜜検体は、200となりました。 輸入アカシアについては、ハンガリー、ルーマニア、イタリア、フランス、ブルガリアの欧州蜂蜜検体50,中国については、山東省、河北省、陝西省、甘粛省、河南省などの中国各地のアカシア蜂蜜産地を網羅し、中国産アカシア蜂蜜検体数は、150、合計で400検体を判別用のデータに用いています。 国産アカシア蜂蜜と、中国、東欧産アカシア蜂蜜安定同位体比の分布を比較すると、国産アカシア蜂蜜は、炭素安定同位体比が-24から-28‰、酸素安定同位体比が18から24‰の範囲内に全体の95%が分布し、中国産アカシア蜂蜜は、炭素安定同位体比が−20から−24‰、酸素安定同位体比が24から32‰の範囲内に95%が分布しています。 東欧産は、国産と中国産の中間的値である炭素安定同位体比が-24から-26‰、酸素安定同位体比が24から28‰に全体の95%が分布しています。(同位体研究所アカシア蜂蜜2009,2010年データより) 同位体研究所は、これらのデータについては、継続してデータ蓄積・更新を行っています。

安定同位体比によるアカシア産地の判別

分析値の統計解析の手法

統計的に産地を判別
判別点の分布と判別の精度
安定同位体比を用いて、蜂蜜の産地を判別する為に、同位体研究所は「予めグループが特定された値群を用いて、所属の不明のデータが、どのグループに属するかを解析する」統計解析の手法である判別分析法を用いています。 予め由来地域が特定された蜂蜜の炭素・酸素安定同位体比について、由来地域毎の値分布を解析し、統計的にこの地域を判別する関数が算出されます。 この関数に分析値を代入する事で得られた判別点から、どの群に属するかを判定する手法という手法です。 この統計解析による蜂蜜の原産国の判別を行うと、中国産、国産の判別率は、99.5%(的中率)、東欧産、国産判別は、93.8%と高い精度での判別が可能となります。 判別については、安定同位体比値が大きく異なるほど判別の正答率は高くなり、逆に地域によって類似した値を示す検体がある場合、境界の近くでは、誤判定の確率が高くなる。 アカシア蜂蜜の場合、中国産と国産蜂蜜の値が顕著に異なる為、値群の境界での両産地の値群の交差はほとんどありません。 このため判別的中率が高くなります。 一方、東欧産は、国産蜂蜜の値に近い為、境界付近での値の交差が見られ、この分、的中率が低下しています。 研究所では、判別精度を高めるため、常時基礎データの集積を進めているほか、毎年毎のデータ更新を行うなどの改善を行っています。 尚、判別分析による解析では、判別後に、判別の正当性の統計的確率も得られます。これは国産と中国産判別を行う場合は、国産事後確率、中国産事後確率と言われるもので、判別分析により得られた所属群(ここでは国産又は中国産)の判別が統計的にどの程度の確率であるかを示すものです。 二つの群の中間点では、事後確率は50%となります。 同位体研究所においては、判別結果について、事後確率値も踏まえて、判別結果を報告しています。

中国産と国産の混合について

中国産と国産アカシア蜂蜜を混合すると、東欧産の値を示す

はちみつの炭素及び酸素安定同位体比について、国産と中国産を混合した場合、混合はちみつの安定同位体比は、それぞれの混合割合を反映します。 例えば中国産アカシア蜂蜜の酸素安定同位体比は、28.0‰であり、国産アカシア蜂蜜の酸素安定同位体比は21.3‰とすると国産10%と、中国産90%の混合蜂蜜の場合、酸素安定同位体比は、 酸素安定同位体比:(28.0x0.9)+(21.3x0.1)=27.3となります。 このように東欧産と判別された場合、中国産と国産混合においても、値は東欧産の安定同位体比値群と重なる為、判別に際しては東欧産又は、国産・中国産混合の可能性を指摘する事で注意を追記しています。

検査に関するよくある質問

判別精度の向上への取り組み

糖やフレーバーの添加されたハチミツの分析

蜂蜜の安定同位体比分析においては、万一、蜂蜜に糖が添加されていた場合、当然安定同位体比値に影響が生じます。 この結果、糖が添加された蜂蜜の産地を分析する場合には、注意が必要です。 この点については、蜂蜜よりわずかに含まれるタンパク質を抽出し、この蜂蜜糖タンパク質の安定同位体比を分析する事で、正確な検査が可能となります。 仮に糖が添加されていても、添加された糖にはタンパク質は存在しませんから、蜂蜜から抽出された糖タンパク質は、「はちみつ」由来のもののみです。 このような蜂蜜からの抽出タンパク質の分析は、糖添加分析で利用されており、この手法を利用して、糖添加の影響を取り除くというものです。 同位体研究所は、糖・酸素安定同位体比分析に加えて、欧州で研究されている抽出タンパク質の水素安定同位体比分析による判別などの研究を行っています。 例えば、この抽出タンパク質の安定同位体比分析を利用すれば、ミカンや、果実、糖が添加された蜂蜜についても産地の判別が可能となります。