定量検査で必要な定量下限と検出下限とは?

定量限界と定量下限の違い

分析検査においては、定量限界と定量下限という言葉がしばしば使用されます。測定においての定量の限界という意味では、定量限界も定量下限も同じですが、定量限界は、最大値の限界と最小値の限界の両方を意味します。一方、定量下限とは最小定量の限界(下限値)を意味します。 従って、最小定量下限という意味から「定量下限」「定量下限値」という表現を使用します。

食品の新放射能規制値と測定に必要な定量下限値

一般食品の新規制値である放射性セシウム(合算)が100Bq/kgです。この規制値を満たす為には、定量検査を実施し、測定結果が100Bq/kgと出たとすると、この測定値が信頼できるものでなければなりません。定量検査においては、測定の基準となる値(ここでは規制値である100Bq)が信頼性をもって測定できる為には、定量下限値は基準値の1/10である必要があります。つまり、定量下限値が10Bq/kgであれば、測定値の100Bq/kgの信頼性が得られますので、新規制値への適合の可否を判定できます。また定量下限値(測定値が信頼できる下限の値)以下でも、検出があると判断できる検出下限値は、定量下限値の1/3となり、3 Bq/kgとなります。つまり、測定値が3 Bq以上10Bq未満の値を示す場合、定量値としては、信頼性に劣る為、測定値は判断されませんが、3 Bq以上、10Bq未満の「検出」があったと判断されます。このように放射性セシウムの合算値が100 Bq/kgと測定された場合、上記のように測定条件として放射性セシウムが合算で10Bq/kgの定量下限をもって測定している事が必要となります。

これが新規制に伴い、ゲルマニウム半導体検出装置による測定が必要となる理由です。

同様に、飲料水であれば放射性セシウムの合算値での規制値が10 Bq/kgですから、定量検査においては、放射性セシウム134 と137について、定量下限値が0.5 Bq/kgを満たす条件で検査する必要があります。牛乳、乳児用食品の定量検査で必要な水準は、2,5 Bq/kg(放射性セシウム134,137それぞれについて)となります。

ゲルマニウム半導体検出器による測定での定量下限と検出下限の扱い

ゲルマニウム半導体検出装置では、検出器部にいろいろな種類のγ線核種が当たりその電子パルスが検出されます。測定においては、例えば放射性セシウムの検出ピークを、「検出」と判断する上で、バックグルンド(ノイズ)の2倍以上であるものとしています。放射能測定においては、定量下限=検出下限としてよく扱われますが、同位体研究所では、バックグラウンドの3倍を定量下限として、これ以上の検出の場合は、「定量」測定値として扱います。もしバックグラウンドの2倍のピーク(図の2Nという場所)が認められた場合は、検出であるであろうが、定量性は満たさないものとして、判断します。

このような場合には、測定時間をより長くとり、検出パルスを積算する事で、再度計測を行い定量下限を満たすかの判断を行っています。

検査報告書の測定値・定量下限値の意味

このように同位体研究所においては、報告書に定量下限値と記載された値については、この値以上の測定値は、定量測定値として適正であり「定量・検出」と判断されます。もし計測値が定量下限値よりも小さい場合には、定量下限値の2/3以上であれば「検出」と見なします。 この場合は、再度測定時間を延長して確定しています。従って、同位体研究所の測定結果については、以下のように読み取れます。

(注意: 放射能測定では、一般に定量下限値は、バックグラウンドの3倍として扱われ、定量下限値=検出下限値として扱われます。従って、検査機関によっては、定量下限値以下は「ノイズと区別できない」として「ND」「不検出」と表記される場合が一般的です。同位体研究所の場合、バックグラウンドの2倍の値を「検出」と見なし、測定時間を長くとり、再測定する事で、定量下限の「バックグラウンドの3倍」に入るかどうかの確認を行っていますが、これは同位体研究所独自の検出精度管理上の対応です。この手順の場合、定量下限の2/3の測定値までは検出かどうか再検査されるので、ND表示の場合は、左図のように2.0 Bq/kg以上の検出はなかったという事になります)